要点
- ひとり社長が持つのは意思決定・人との関係・新規事業の3つで、作業と管理・確認はAIが通知し、社長はOK・直して・やめる・あとで・専門家に回すで応答するだけにする。
- 構成は社長・AI・SaaSの3層で、情報の正本と実行の場はSaaSに置き、AIは複数のSaaSを読んで選び、まとめ、下書きし、応答の結果をSaaSに記録する。
- 送信・支払い・公開・契約は社長のOKのあとにだけ実行し、導入はルールの文書づくり、メールとカレンダーの接続、朝のまとめの登録の3ステップから始める。

結論として、ひとり社長が自分で持つ仕事は「判断する」「人と会う」「新規事業を検討する」の3つに絞ります。それ以外は、AI が SaaS(CRM・メール・カレンダー・会計など)の情報を読んで下書き付きで通知し、社長は「OK」「直して」「やめる」「あとで」「専門家に回す」の5種類で応答するだけにします。メールの送信・支払い・公開・契約は社長の OK のあとにだけ実行し、実行した内容は SaaS に記録します。
この記事は、従業員がいない、またはごく少人数で会社を回している経営者(以下、ひとり社長)に向けて、今ある AI と業務用のクラウドサービス(以下、SaaS)を組み合わせて、どこまで仕事を自動化できるかを、組み方の手順まで含めて説明します。
扱う範囲は、営業・連絡・資料づくり・発信・お金・契約・調べものといった、社長が日々こなしている業務です。システム開発の話はしません。設定画面でつなぐ、ルールを文章で書く、届いた通知に応答する、という範囲で組める構成を前提にしています。
結論は次のとおりです。
この構成にすると、社長は「AI に何を頼むか考えて指示を書く」という手間から離れられます。AI から届いた通知を読み、5種類のどれかで応答すれば、その先の作業は AI と SaaS が進めます。
記事の中で挙げるサービス名は、代表的な例です。いずれも、AI とつながる経路(公式の API、公式の連携機能、公式の MCP サーバーなど)をサービス提供元が用意しているものです。2026年11月時点の公開情報に基づきます。機能や対応範囲は変わることがあるため、導入するときは各サービスの公式ページで最新の内容を確かめてください。
なお、MCP(Model Context Protocol)は、AI が外部のサービスに接続してデータを読んだり操作したりするための共通の接続方式です。サービス側が MCP サーバーを用意していると、Claude や ChatGPT などの AI から設定画面で接続できる場合が多くなります。
自動化の設計は、自分の業務を分けるところから始めます。分けずに「AI で効率化しよう」と考えると、目についた作業から手を付けることになり、どこまで任せてどこを自分で持つかが決まりません。この章では、業務を「部門」と「区分」の2つの軸で分けます。
会社の業務は、規模が小さくても次の8部門に分けられます。ひとり社長は、このすべてを1人で兼ねています。
| 部門 | 主な業務 |
|---|---|
| マーケティング | 発信(記事・SNS・メールマガジン)、サイトの更新、問い合わせの数や流入の数字の確認 |
| 営業 | 問い合わせへの返信、商談の準備、商談、見積・提案書の作成、追客 |
| サービス提供・制作 | 納品物の作成、作業の進行管理、修正対応、納期の管理 |
| カスタマーサクセス・サポート | 既存顧客の利用状況の確認、更新の案内、問い合わせ対応 |
| 経理・財務 | 請求書の発行、入金確認と催促、経費の処理、資金繰りの確認、税理士とのやり取り |
| 総務・法務 | 契約書の確認と締結、契約の更新期限の管理、各種届出・支払いの期限管理、弁護士とのやり取り |
| 人事・外注管理 | 外注先の選定と依頼、納品の確認、支払い、社労士とのやり取り |
| 経営企画 | 月の振り返り、業界の動きの把握、次の打ち手と新規事業の検討 |
この表を見て、自分が今どの部門の業務にどれだけ時間を使っているかを書き出してみてください。多くの場合、営業・経理・総務の細かい作業に時間が取られ、経営企画に回す時間がほとんど残っていないことが分かります。
部門とは別に、業務を「性質」で6つに分けます。同じ営業部門の業務でも、「どの顧客を優先するか決める」と「見積書を作る」では性質がまったく違うためです。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ①意思決定 | 選ぶ・決める・断る | 受注するか、値引きするか、外注先をどこにするか、支払うか |
| ②作業 | 手を動かして形にする | 見積書・請求書・議事録・返信文・記事の作成、データの入力 |
| ③目の前の改善 | 今の業務のやり方を少し良くする | 問い合わせフォームの項目の見直し、よく使う返信文の整備、請求の手順の見直し |
| ④新規事業・将来のビジネスづくり | 今の事業の外を調べ、次の柱を考える | 業界の動き・新しい技術・規制の変化の調査、新しい商品やサービスの検討 |
| ⑤人との関係 | 顧客・取引先・専門家・紹介者との関係をつくり、保つ | 商談、会食、お礼、近況の連絡、紹介のお願い |
| ⑥管理・確認 | 抜け漏れがないか見張る | 入金の確認、期限の確認、未返信の確認、数字の確認 |
6区分それぞれについて、ひとり社長の時間がどう使われているか、AI にどこまで渡せるかを整理します。
意思決定そのものにかかる時間は短いものです。時間がかかるのは、決めるための材料を集める部分です。過去のメールを探す、CRM で取引の経緯を確かめる、会計ソフトで残高を見る、といった作業が、判断の前に毎回発生しています。
AI に渡せるのは、材料集めと選択肢の整理です。「受注するかどうか」を決める場面なら、AI が過去のやり取り、相手の会社情報、自社の今の稼働状況、似た案件の利益をまとめ、「おすすめはこれ、理由はこれ」という形で通知します。決めるのは社長です。
ひとり社長の時間をもっとも多く取っている区分です。返信文、見積書、請求書、議事録、提案書、記事の下書き、CRM への入力などが含まれます。
AI に渡せる範囲がもっとも広い区分です。下書き・作成・入力はほぼすべて AI に渡せます。ただし、作ったものを外に出す操作(送信・公開・提出)は、社長の OK を経てから実行します。
「この手順は毎回面倒だ」と感じても、日々の作業に追われて手を付けられないまま残りやすい区分です。
AI は、日々の作業の記録から「同じ修正を何度もしている」「同じ質問に何度も答えている」といった繰り返しを見つけ、改善案として通知できます。社長は案を見て、採用するかどうかを決めます。案を出す部分は AI、採用するかどうかは社長です。
もっとも大事なのに、もっとも後回しになる区分です。調べる時間が取れない、調べても情報が多すぎて読み切れない、という状態が続きます。
AI に渡せるのは、情報を集めて自社に関係あるものを選び、要点をまとめる部分です。何を調べるかのテーマを決めること、まとめを読んで「深掘りする」「試す」「捨てる」を選ぶことは社長が持ちます。この流れは第5章で詳しく説明します。
人と会う、話す、関係を保つことは、社長が自分でやる仕事です。一方で、その前後の作業には時間がかかっています。前回いつ会ったか、何を話したかを思い出す、お礼のメールを書く、しばらく連絡していない相手に気づく、といった作業です。
AI に渡せるのは、接点の整理、返信やお礼の下書き、連絡漏れのアラートです。流れは次の3段階です。
通知の例は次のとおりです。
【人との関係】しばらく連絡していない相手(2名)
1. (会社名)(氏名)様:最後の接点は(日付)の会食。前回、(話題)について情報交換を約束
→ 近況伺いのメールを下書きしました
2. (会社名)(氏名)様:(日付)に案件を紹介いただいた方。案件のその後を未報告
→ 受注の報告とお礼のメールを下書きしました
応答:番号ごとに OK で送信/直して/やめる/あとで
会う・話す・送る判断は社長が持ち、その前後の準備と見張りを AI に渡す形です。
入金されたか、期限が近いものはないか、返信していないメールはないか、といった確認です。一つ一つは短時間でも、毎日・毎週発生し、抜けると損失が出ます。
AI に渡しやすい区分です。AI が定期的に SaaS の記録を確認し、問題があるものだけを通知します。社長は「問題なし」の確認作業をしなくて済み、通知が来たものだけに対応します。
ここまでの整理をまとめると、次のようになります。
| 担当 | 区分 | 社長がすること | AI がすること |
|---|---|---|---|
| 社長に残す | ①意思決定 | 選ぶ・決める・最後の OK | 材料集め、選択肢と推奨案の整理 |
| 社長に残す | ⑤人との関係 | 会う・話す・送る | 接点の整理、下書き、連絡漏れのアラート |
| 社長に残す | ④新規事業・将来のビジネス | テーマを決める、深掘り・試す・捨てるを選ぶ | 情報収集、自社との関係の判定、要約 |
| AI に渡す | ②作業 | 仕上がりを見て OK か直してを返す | 下書き、作成、入力 |
| AI に渡す | ⑥管理・確認 | 通知が来たものに応答する | 定期確認、異常の検知、通知 |
| AI が案を出す | ③目の前の改善 | 採用するかを決める | 繰り返しの発見、改善案の作成 |
AI にはもう一つ、情報の仕分けを渡します。届いたメール、問い合わせ、ニュースのうち、社長が見る必要があるものとないものを分け、見る必要があるものだけを通知にします。
どの区分でも、最後の OK は社長です。AI に渡すのは「OK の手前まで」と考えてください。
8部門と6区分を掛け合わせると、自分の業務のどこを AI に渡せるかが一覧で分かります。表の中は、その部門でその区分に当たる代表的な業務です。
| 部門 | ①意思決定 | ②作業 | ③目の前の改善 | ④新規事業・将来 | ⑤人との関係 | ⑥管理・確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| マーケティング | 発信するテーマを決める | 記事・SNS の下書き | 反応の良い型を残す | 新しい発信手段の検討 | 協業先・紹介者との連絡 | 問い合わせ数・流入の変化 |
| 営業 | 受注・値引きの判断 | 返信・見積・議事録 | 返信文の型の整備 | 新しい顧客層の検討 | 商談・お礼 | 止まった商談・未返信 |
| サービス提供・制作 | 納期・範囲の判断 | 納品物の下書き | 作業手順の見直し | 新しい提供形態の検討 | 顧客との打ち合わせ | 締め切り・修正依頼 |
| カスタマーサクセス・サポート | 更新条件の判断 | 問い合わせ回答の下書き | よくある質問の整備 | 追加サービスの検討 | 定期の連絡 | 利用の減少・更新期限 |
| 経理・財務 | 支払い・投資の判断 | 請求書・経費の入力 | 請求手順の見直し | 資金の使い道の検討 | 税理士との相談 | 入金・資金の見込み |
| 総務・法務 | 契約するかの判断 | 契約書の確認メモ | 契約書の雛形の整備 | 新事業に必要な許認可の確認 | 弁護士との相談 | 更新期限・届出期限 |
| 人事・外注管理 | 依頼先の決定 | 依頼文・候補の整理 | 依頼手順の見直し | 体制の検討 | 外注先との関係、社労士との相談 | 納品・支払いの確認 |
| 経営企画 | 次の一手の決定 | 月次のまとめ | 振り返りの型の整備 | トレンド調査・新規事業 | 経営者仲間・支援者との接点 | 月次の数字 |
この表の②と⑥の列は AI に渡す範囲、①・④・⑤の列は社長が持つ範囲、③の列は AI が案を出して社長が選ぶ範囲です。第4章では、部門ごとにこの表の中身を具体的な通知の流れに落とし込みます。
この章で説明する仕組みの全体は、次の図のとおりです。SaaS(CRM・メール・カレンダー・会計など)にある情報を AI が読み、必要なものを選び、まとめ、下書きを作って社長に通知します。社長は「OK」「直して」「やめる」「あとで」「専門家に回す」のどれかで応答します。OK が出たものだけを AI が実行し、実行した内容を SaaS に記録します。
多くの人が最初に使う AI の形は、「頼めば答える」形です。チャット画面を開き、「このメールへの返信を書いて」「この資料を要約して」と指示を書くと、AI が答えを返します。これを指示型の運用と呼びます。
指示型でも作業そのものは速くなります。ただし、次の手間が残ります。
つまり指示型では、社長が「AI の上司」として仕事を割り振り続ける必要があります。ひとり社長にとって、この割り振りの手間は小さくありません。
通知型の運用では、向きが逆になります。AI のほうから社長に通知が届き、社長はそれに応答します。
仕組みは次の4段階です。
これを実現するには、AI を「決まった時刻やきっかけで自動的に動く」状態にしておく必要があります。代表的な方法は次のとおりです。
どちらの方法でも、社長がやることは「どのきっかけで、何を調べ、どう通知するか」を文章で決めて登録することです。
このほか、AI が自分で作業を進め、影響の大きい操作の前で止まって承認を求める、という作りをそのまま製品にしたエージェントも出ています。OpenAI の dots、xAI の Grok Bot、Meta の Muse、Anthropic の Claude Duet は、メールの送信や購入、支払いなどの前に利用者へ確認を求めます。このうち Claude Duet は、毎朝のまとめを届け、利用者が離れている間も作業を進めるという点で、この章の通知型の運用に近い作りです。Anthropic の Claude Code も、操作の前に確認を求める設定で使えます。各製品の概要は 3-2 で説明します。
通知は、きっかけの種類で4つに分けると設計しやすくなります。
| 種類 | きっかけ | 例 |
|---|---|---|
| 定期 | 決まった時刻・曜日 | 毎朝のまとめ、毎週の商談状況、毎月の振り返り |
| きっかけ | 何かが起きたとき(メールの受信、フォームの回答、予定の前後) | 問い合わせが届いた、商談の30分前になった、商談が終わった |
| 期限 | 期日が近づいたとき | 請求書の発行日、入金期日、契約の更新期限、届出の期限 |
| 異常 | 数字の急変、動きが止まったとき | 問い合わせが急に減った、商談が2週間動いていない、入金が期日を過ぎた |
定期の通知は、毎朝のまとめを中心にします。前日から届いたメールのうち対応が必要なもの、今日の予定と準備、期限が近いもの、返事待ちの案件を1通にまとめます。
きっかけの通知は、その場で動いたほうがよいものに使います。問い合わせが届いたら、返信の下書き付きで通知します。商談の前には相手のメモを、商談の後には議事録とお礼メールの下書きを届けます。
期限の通知は、期日から逆算して届くようにします。請求書なら発行日の数日前、契約の更新なら解約の申し入れ期限の前、というように、対応に必要な時間を見込んで通知の日を決めます。
異常の通知は、「いつもと違う」ことを知らせます。何も起きていないときは通知しません。社長が「問題なし」を確かめるための通知は送らないようにします。
社長の応答は、次の5種類に決めておきます。種類を決めておくと、どの通知にも同じ動きで応えられ、迷う時間がなくなります。
| 応答 | 意味 | 応答後に AI がすること |
|---|---|---|
| OK | そのまま進める | 下書きの送信、請求書の発行、予定の登録など、提案どおりに実行する。送信・公開・支払いは、この OK で初めて実行する。実行したことを SaaS に記録する |
| 直して | 一言の修正を付けて戻す | 修正の指示に沿って直し、再度通知する。同じ種類の修正が繰り返される場合は、ルールとして覚える(3-7で説明) |
| やめる | 却下する | 実行しない。却下したことと理由を記録し、同じ提案を繰り返さない |
| あとで | 保留する | 社長が決めた日(または決めた条件)に、もう一度通知する |
| 専門家に回す | 税理士・弁護士・社労士などに相談する | 相談内容と資料をまとめ、依頼文を下書きして通知する。社長が依頼文に OK を出したら送る。専門家の返答が届いたら、その内容をもとに改めて通知する |
それぞれの応答について、もう少し詳しく説明します。
OK は、提案どおりに進めてよいという意味です。メールの送信、請求書の発行、記事の公開、支払いの登録などは、この OK があって初めて実行します。OK が出る前の段階では、AI は下書きを作るところまでしか進めません。
直しては、一言で修正を伝える応答です。「もっと短く」「金額は税込で」「来週ではなく今週中と書いて」のように、直す点だけを返します。AI は直した版をもう一度通知し、社長は改めて OK か直してを返します。
やめるは、提案を却下する応答です。理由を一言付けておくと、AI はその理由も記録し、同じ種類の提案を控えます。たとえば「この業界の案件は受けない」と理由を付けて却下すると、次から同じ業界の問い合わせには「方針により見送り候補」と付けて通知するようになります。
あとでは、今は決めないという応答です。「来週月曜」「見積が届いてから」のように、いつ再通知するかを添えます。添えなかった場合に何日後に再通知するかは、あらかじめルールで決めておきます。
専門家に回すは、社長だけでは判断しないほうがよい内容を、税理士・弁護士・社労士などに相談する応答です。AI は、相談したい点、関係する資料(契約書、請求書、メールのやり取りなど)、聞きたいことを整理した依頼文を下書きします。依頼文の送信も社長の OK が必要です。専門家から返答が届いたら、AI はその内容を要約し、「専門家の意見はこう、それを踏まえたおすすめはこう」という形で再び通知します。
通知文は、毎回同じ型にそろえます。型がそろっていると、読む場所が決まり、数秒で判断できます。
通知文の型
【種類】件名(何についての通知か)
結論:何をするか(おすすめ)
理由:なぜそれをすすめるか(1〜3行)
材料:判断に使った情報(どこから取ったか)
下書き:送る文面・作った書類(ある場合)
期限:いつまでに応答が必要か
応答:OK/直して/やめる/あとで/専門家に回す
以下は、場面ごとの文面例です。( )の部分は、実際の通知では具体的な名前や数字が入ります。
例1:問い合わせへの返信(きっかけ)
【問い合わせ】(会社名)様から、(サービス名)についての問い合わせ
結論:今日中に返信し、来週の候補日を3つ出すのがおすすめです。
理由:問い合わせの内容が、主力サービスの対象業種・規模に合っています。
相手のサイトを確認したところ、(事業内容)の会社です。
材料:問い合わせフォームの回答、相手の会社サイト、CRM(過去の接点なし)
下書き:返信メール(候補日はカレンダーの空きから3つ選んでいます)
期限:本日18時までに返信できると、返信の目安としている当日中に収まります
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで/専門家に回す
例2:入金の遅れ(異常)
【入金】(会社名)様の(月)分請求、入金期日を過ぎています
結論:確認のメールを送るのがおすすめです。
理由:入金期日から3日経過しています。過去の取引では毎回期日内に入金されているため、
先方の処理漏れの可能性があります。
材料:会計ソフトの入金明細、請求書の発行記録、過去の入金履歴
下書き:入金確認のメール(丁寧な確認の文面です)
期限:今週中
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで/専門家に回す
例3:契約の更新期限(期限)
【契約】(サービス名)の契約、自動更新の解約申し入れ期限が近づいています
結論:継続するかどうかを今週中に決めてください。
理由:解約申し入れの期限は(日付)です。過ぎると同じ条件で1年更新されます。
直近3か月の利用記録では、月に数回の利用にとどまっています。
材料:電子契約サービスに保管された契約書、利用記録、会計ソフトの支払い履歴
下書き:解約する場合の申し入れ文
期限:(日付)
応答:OK(継続)/直して/やめる(解約手続きへ)/あとで/専門家に回す
例4:商談後(きっかけ)
【商談後】(会社名)様との打ち合わせが終了しました
結論:議事録を CRM に登録し、お礼メールを送るのがおすすめです。
理由:先方から見積の依頼がありました(録音の文字起こしより)。
材料:商談の文字起こし、CRM の取引情報、カレンダーの予定
下書き:議事録(決まったこと・宿題・次回日程)、お礼メール、見積書の下書き
期限:お礼メールは本日中
応答:OK で登録・送信/直して/やめる/あとで/専門家に回す
例5:毎朝のまとめ(定期)
【朝のまとめ】(日付)
今日決めること(2件)
1. (会社名)様の見積、値引きの可否 → おすすめ:値引きせず納期で調整
2. 外注先の選定 → おすすめ:候補 B(理由:過去の納品実績あり)
今日送るもの(3件):返信2件、請求書1件(すべて下書き済み)
今日の予定:14時 (会社名)様と商談 → 相手メモは13時半に届きます
期限が近いもの:(届出名)の提出期限まであと5日
返事待ち:(会社名)様(4日返信なし)
応答:項目ごとに OK/直して/やめる/あとで/専門家に回す
例6:専門家への相談(専門家に回すを選んだあと)
【専門家に回す】税理士への相談文を作成しました
相談内容:(内容)を経費として処理してよいかの確認
添付:領収書の画像、関係するメールのやり取り
下書き:税理士宛ての依頼文
応答:OK で送信/直して/やめる
通知は便利な反面、増えすぎると読まれなくなります。次のルールを決めておきます。
Google Workspace を使っている場合は、Google Chat を届く場所にする方法もあります。AI の提案をチャット上で承認してから実行する組み方は、Google ChatとAIエージェントの連携で確認できます。
通知に応答がないまま時間が経つと、期限を過ぎたり、同じ通知が溜まったりします。未応答の扱いを決めておきます。
| 状況 | 処理 |
|---|---|
| 期限のある通知に応答がない | 期限の前日(または決めたタイミング)に再通知する。件名に「再通知」と付ける |
| 期限当日になっても応答がない | 当日の朝のまとめの先頭に載せる。急ぎの場合はその場でも届ける |
| 期限を過ぎた | 実行はしない。「期限を過ぎた」ことを記録し、次の対応案(遅れた場合の連絡文など)を付けて通知する |
| 期限のない通知に応答がない | 一定期間(たとえば1週間)経ったら、週のまとめに「未応答」として一覧で載せる |
| 「あとで」で保留したもの | 社長が指定した日に再通知する。日が指定されていない場合は、ルールで決めた日数後に再通知する |
| 同じ種類の通知が溜まっている | 個別に送らず、まとめて1件にする(例:「返信待ちのメールが5件あります」) |
大事なのは、応答がないことを理由に AI が送信・支払い・公開・契約を進めないことです。期限が過ぎても、AI がするのは記録と再通知までです。
構成は、社長・AI・SaaS の3層で考えます。
| 層 | 役割 | 具体的にすること |
|---|---|---|
| 社長 | 判断・応答 | 通知を読み、5種類のどれかで応答する。人と会う。新規事業を考える |
| AI | SaaS をまたいで読む・選ぶ・まとめる・下書き・入力 | 複数の SaaS から情報を集め、必要なものを選び、要約し、下書きを作り、社長の OK のあとに SaaS へ入力・実行する |
| SaaS | 情報の正本・実行の場 | 顧客情報・取引・予定・ファイル・会計の記録を持つ。メールの送信、請求書の発行、契約の締結など、実際の操作が行われる場所。最後の OK を押す場所 |
情報は次の順で流れます。
5の「SaaS に記録する」が抜けると、AI の中にだけ情報が残り、あとで探せなくなります。記録先を決めておくことが、この構成の要です。
AI には、使い方の違いで3つの形があります。
| 形 | 動き方 | 向いている業務 | 代表的なサービス・機能 |
|---|---|---|---|
| 対話型 | 社長が話しかけると答える | その場の相談、文章の手直し、資料の要約、考えの整理 | ChatGPT、Claude、Gemini のチャット画面 |
| 定期実行型のワークフロー | 決まった時刻やきっかけで、決まった手順を自動で実行する | 毎朝のまとめ、期限の確認、入金の確認、問い合わせの受付と下書き | ChatGPT の定期タスク、Claude の定期実行タスク、Gemini のスケジュール設定された操作、Zapier |
| エージェント型 | 目的を渡すと、必要な手順を AI が考え、複数の SaaS をまたいで進める | 商談前の相手の下調べ、外注先の候補探し、トレンド調査、月次の振り返りの作成 | Claude の Cowork や Claude Code、Anthropic の Claude Duet、OpenAI の dots、xAI の Grok Bot、Meta の Muse など、作業を丸ごと任せられる機能・製品 |
使い分けの考え方は次のとおりです。
通知型の運用では、定期実行型とエージェント型が中心になります。対話型は、通知を受けて「もう少し詳しく知りたい」ときに使う補助の位置づけです。
エージェント型は、各社から製品として提供されるようになっています。代表的なものを、提供元の公式ページで確認できる範囲で挙げます。
どの製品も、作業は自分で進め、送信や購入のように取り消しにくい操作の前で止まって承認を求める、という点が共通しています。これは第2章で説明した通知と応答の流れと同じ考え方です。製品を選ぶときも、7-1 で挙げる送信・支払い・公開・契約の4つが承認の対象になるように設定できるかを確かめてください。
SaaS には2つの役割があります。
1つ目は情報の正本です。顧客情報は CRM、予定はカレンダー、お金の記録は会計ソフト、契約書は電子契約サービス、というように、情報ごとに「ここが正しい」という場所を決めます。AI はその正本を読みに行き、結果を正本に書き戻します。
2つ目は実行の場です。メールを送るのはメールサービス、請求書を発行するのは会計ソフトや請求書サービス、契約を締結するのは電子契約サービスです。AI が下書きを作り、社長が OK を出し、実際の操作は SaaS の上で行われます。
情報を AI の中にだけ持たせると、AI のサービスを替えたときや、AI の会話履歴が消えたときに、情報も失われます。記録を SaaS に残しておけば、AI を替えても情報はそのまま残り、新しい AI からも同じ情報を読めます。
ひとり社長の構成に必要な SaaS は、次の11種類です。それぞれ代表的なサービスを例に挙げます。挙げたサービスは、いずれも AI とつながる公式の経路(API・連携機能・MCP サーバー)が用意されています。
| 種類 | 役割 | 代表的なサービス | AI とのつながり方の例 |
|---|---|---|---|
| CRM(顧客管理) | 顧客・取引・接点の正本 | HubSpot、Salesforce | どちらも公式の MCP サーバーを提供。AI から顧客・取引・メモなどを読み書きできる |
| メール | 連絡の受信・送信 | Gmail、Outlook | Gmail は Claude・ChatGPT・Gemini の連携機能や公式 API で、Outlook は Microsoft Graph(公式 API)で、検索・下書き・送信ができる |
| カレンダー | 予定の正本 | Googleカレンダー、Outlook | Googleカレンダーは AI の連携機能や公式 API で、Outlook の予定は Microsoft Graph で読み書きできる |
| ファイル置き場 | 資料・納品物・書類の保管 | Google ドライブ、Dropbox、OneDrive | Google ドライブは AI の連携機能と公式 API、Dropbox は公式の MCP サーバー、OneDrive は Microsoft Graph |
| チャット | 通知の受け取り、外注先とのやり取り | Slack、Microsoft Teams、LINE WORKS | Slack は公式の MCP サーバー、Teams は Microsoft Graph、LINE WORKS は公式 API(Bot によるメッセージ送信など) |
| 会計 | お金の記録の正本、請求書の発行 | freee会計、マネーフォワード クラウド会計 | どちらも公式の MCP サーバーを提供。仕訳や試算表の取得などができる |
| 電子契約 | 契約書の送付・締結・保管 | クラウドサイン | 公式の Web API で、書類の作成から送付までを外部から操作できる |
| 商談の録音・議事録 | 商談の記録、文字起こし | Zoom、Google Meet | Zoom は公式の MCP サーバーで録画・文字起こしにアクセスでき、Google Meet は公式 API で文字起こしを取得できる |
| 問い合わせフォーム | 問い合わせの受付 | Googleフォーム | 公式 API で回答の取得や、回答時の通知の受け取りができる |
| サイト | 発信・情報公開 | WordPress | 公式の REST API で記事の作成・更新ができる |
| ニュース・アラート | 業界の動きの収集 | Googleアラート | 指定したキーワードの新着情報を、メールまたは RSS フィードで受け取れる |
このほか、サイトのアクセス数を見るために Google アナリティクスを使っている場合は、公式の API(Google Analytics Data API)でレポートの数字を取り出せます。また、上の表のサービス同士や AI とのあいだをつなぐ役として、Zapier のような自動化サービスを使う方法もあります。
すべてを最初からそろえる必要はありません。第9章で説明するとおり、まずメール・カレンダー・ファイル・CRM の4つを AI につなぐところから始めます。
SaaS を選ぶときは、次の基準で判断します。
AI に毎回同じ説明をしないために、社長のルールを1つの文書にまとめます。この文書を、使うすべての AI が参照するようにすれば、どの AI も同じ基準で動きます。
置き場所は、AI が読めるところにします。たとえば Google ドライブや Dropbox の決まったフォルダに置く、AI サービスの「プロジェクト」や「カスタム指示」などの機能に登録する、といった方法があります。複数の AI を使う場合は、ファイル置き場に正本を1つ置き、各 AI からはそれを読むようにすると、内容がずれません。
書く項目の例は次のとおりです。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 会社の情報 | 会社名、事業内容、主なサービスと価格の考え方、対象とする顧客、対象としない顧客 |
| 話し方 | メールの文体(丁寧さの程度)、使わない言い回し、署名、相手との関係ごとの書き分け |
| 判断の基準 | 受ける案件・受けない案件の条件、値引きの方針、外注先を選ぶ条件、支払いの承認の考え方 |
| やってはいけないこと | 社長の OK なしに送信・支払い・公開・契約しない、価格や納期を確約しない、顧客情報を外部に出さない |
| 通知のルール | 朝のまとめの時刻、急ぎとして扱うもの、通知の届く場所、未応答時の再通知のタイミング |
| 専門家の情報 | 税理士・弁護士・社労士の連絡先、どんな内容をどの専門家に回すか |
| 記録のルール | 何をどの SaaS に記録するか、CRM のどの項目に何を書くか |
| よく使う文面 | 問い合わせへの初回返信、お礼、入金確認、日程調整など |
最初からすべて書く必要はありません。会社の情報、話し方、やってはいけないことの3つから書き始め、使いながら足していきます。
「直して」と返したときの修正内容は、その場限りにせず、ルールとして残します。一度直したことを AI に覚えさせ、次から同じことを言わなくて済むようにします。
手順は次のとおりです。
この流れを決めておくと、使うほどに直す回数が減ります。ルールの文書は、月に1度見直して、古くなったものや矛盾するものを整理します(第6章の毎月の運用に入れます)。
AI サービスによっては、会話の内容を覚える機能(メモリ機能)を持っているものもあります。ただし、その機能に記録された内容は、そのサービスの中にしか残りません。別の AI に切り替えたときにも使えるよう、ルールの正本は自分のファイル置き場の文書に置いておきます。
この章では、8部門それぞれについて、次の同じ型で自動化の流れを説明します。
【発信】今週の記事テーマ案(3件)
1. (テーマ)… 先週の商談で2件同じ質問がありました
2. (テーマ)… 問い合わせフォームで増えている相談内容です
3. (テーマ)… 社長メモ((日付))より
おすすめ:1(理由:見込み客が実際に迷っている点のため)
応答:番号で選ぶ/直して/やめる/あとで
【数字】(ページ名)の閲覧が先週から大きく減っています
結論:ページの見出しと冒頭の見直しをおすすめします。
理由:このページは問い合わせにつながる割合が高いページです。
減少は(日付)から始まっています。同じ時期にページの更新はしていません。
直し案:見出し案2つ、冒頭の書き直し案を添付しています
応答:OK(直し案をサイトの下書きに反映)/直して/やめる/あとで
【問い合わせ】今月の問い合わせは前月より減っています
内訳:サイト経由が減少、紹介経由は前月並み
同じ時期の動き:記事の更新が止まっています(最終更新:(日付))
おすすめ:記事の更新を再開する(テーマ案を別途お送りします)
応答:OK/直して/やめる/あとで
【商談前】14時 (会社名)様((相手の役職))
これまで:初回打ち合わせ((日付))、提案書送付((日付))
前回の宿題:こちら → 費用の内訳を出す(送付済み)/先方 → 社内の予算確認
今回決めたいこと:導入時期と担当者
聞いておくこと:予算確認の結果、他社との比較状況
相手の最近の動き:(会社サイトのお知らせより、(内容))
応答:OK(確認済み)/直して(追加で調べてほしいこと)
【見積】(会社名)様 (案件名)の見積書
結論:(金額)で提出するのがおすすめです。
理由:作業範囲は過去の(案件の種類)と同程度です。
先方から値引きの相談がありましたが、ルールに沿い、値引きではなく範囲の調整を案として添えています。
下書き:見積書、送付メール、範囲を減らした場合の別案
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【止まった商談】2週間以上動きのない取引が3件あります
1. (会社名)様:見積送付後、返信なし → 確認メールの下書きあり
2. (会社名)様:先方の社内確認待ち(期限は先方から未提示) → 来週まで待つ案
3. (会社名)様:日程調整中に返信が途絶 → 候補日を出し直すメールの下書きあり
応答:番号ごとに OK/直して/やめる(失注として記録)/あとで
【制作】(会社名)様 (納品物名)の下書きができました
内容:構成と本文の下書き(案件フォルダに保存済み)
確認してほしい点:3章の数字は先方資料((資料名))から引用しています。最新版か確認が必要です
納期:(日付)(あと5日)
応答:OK(仕上げに進む)/直して/やめる/あとで
【締め切り】今週締め切りの案件が2件あります
1. (会社名)様 (納品物名):(日付)締め切り/下書き完成、社長確認待ち
2. (会社名)様 (納品物名):(日付)締め切り/先方の素材がまだ届いていません
→ 素材の催促メールを下書きしました
応答:番号ごとに OK/直して/やめる/あとで
【修正依頼】(会社名)様から(納品物名)の修正依頼(3点)
1、2 は契約の範囲内です → 修正案を作成済み
3 は契約の範囲外(新しいページの追加)です → 追加見積の案を作成済み
下書き:修正版、返信メール(3は追加費用の案内)
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【利用の減少】(会社名)様の利用がここ1か月で大きく減っています
最後の接点:(日付)の定例打ち合わせ(議事録:先方の担当者が変わる予定と発言)
おすすめ:新しい担当者への引き継ぎの打ち合わせを提案する
下書き:打ち合わせの提案メール(候補日3つ)
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで
【更新】(会社名)様の契約が(日付)に更新を迎えます
今回の条件:前回と同じ(変更なし)
下書き:更新の案内メール、この1年の利用状況のまとめ
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで
【問い合わせ】(会社名)様から(機能・内容)の使い方について
下書き:回答メール(過去に同じ質問へ回答した内容をもとに作成)
補足:同じ質問は今月3件目です。よくある質問への追加案も作成しました
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで
【請求】今月の請求書(5件)の下書きができました
1〜4:先月と同じ金額(継続契約)
5:(会社名)様 前月より増額(追加作業分、(日付)の見積に基づく)
請求日:(日付)/支払期日:(日付)
応答:OK(発行・送付)/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【経費】今週の領収書(8件)を登録の準備ができました
6件:通常どおり(勘定科目の案を付けています)
2件:判断が必要
・(支払先)(金額):カレンダー上は(会社名)様との会食の日です。会議費か交際費か
・(支払先)(金額):私用か事業用か判断できません
応答:OK(登録)/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【資金】今後3か月の手元資金の見込み
(月):見込み残高(金額)
(月):見込み残高(金額) ← 税金の納付があり、決めた水準を下回る見込み
(月):見込み残高(金額)
おすすめ:(会社名)様の大口請求の入金日を確認する/税理士に納付額を確認する
応答:OK/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【契約書】(会社名)様から(契約書名)の確認依頼
要点:契約期間1年・自動更新/支払いは月末締め翌月末払い
いつもの条件と違う箇所(2点)
1. 損害賠償の上限の定めがありません
2. 成果物の権利がすべて先方に移る内容です
おすすめ:2点について弁護士に確認する
応答:OK(締結へ進む)/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【期限】(届出・納付の名称)の期限まであと7日
必要なもの:(書類名)、(書類名)(ファイル置き場に保存済み)
不足:(書類名)が見つかりません
おすすめ:税理士に提出を依頼済みか確認する
応答:OK/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【専門家に回す】弁護士への相談文を作成しました
相談内容:(会社名)様との契約の(条項)について
経緯:時系列のまとめ(メール5通、契約書、議事録2件から作成)
聞きたいこと:3点
応答:OK で送信/直して/やめる
【外注】(案件名)の外注先候補(3件)
1. (外注先):過去に2回依頼、納期どおり/今回の作業内容と同じ分野
2. (外注先):過去に1回依頼、修正が多かった記録あり
3. (外注先):依頼実績なし、紹介者((紹介者の会社名))の推薦
おすすめ:1(理由:同じ分野の実績と納期の記録)
応答:番号で選ぶ/直して/やめる/あとで
【依頼文】(外注先)への依頼文を作成しました
内容:作業内容、納期((日付))、金額((金額))、納品形式、確認の流れ
注意:この相手とは秘密保持の取り決めがまだありません。先に取り交わす案内を入れています
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで/専門家に回す
【納品】(外注先)から(成果物)が届きました
依頼条件との照合:形式・分量は条件どおり
気になる点:2か所、依頼文の指定と表記が違います(一覧を添付)
おすすめ:2か所の修正を依頼してから受け取る
下書き:修正依頼のメール
応答:OK で送信/直して/やめる/あとで
【専門家に回す】社労士への相談文を作成しました
相談内容:(業務内容)を、外注のまま継続するか雇用に切り替えるか
整理した内容:今の依頼の頻度・時間・指示の出し方
聞きたいこと:雇用に切り替える場合に必要な手続き、外注を続ける場合の注意点
応答:OK で送信/直して/やめる
【月の振り返り】(月)のまとめ
売上:(金額)(前月比、目標比)
商談:新規(件数)、受注(件数)、失注(件数)/失注の主な理由:価格
時間の使い方:商談(時間)、制作(時間)、事務(時間)
目立った点:失注の理由が価格に集中しています
次の月の案:見積の段階で範囲を減らした別案を出す(ルールに追加する案)
応答:OK/直して/やめる/あとで
【次の一手】次の四半期の候補(3件)
1. (施策):最初の一歩=(具体的な行動)/関係する部門:営業・マーケティング
2. (施策):最初の一歩=(具体的な行動)/関係する部門:サービス提供
3. (施策):最初の一歩=(具体的な行動)/関係する部門:経営企画
おすすめ:1(理由:この3か月の失注理由と、業界の動きの両方に関係するため)
応答:番号で選ぶ/直して/やめる/あとで/専門家に回す
8部門の自動化を一覧にまとめます。
| 部門 | 主なきっかけ | AI がすること | 社長の主な応答 | 人が必ず確認する箇所 |
|---|---|---|---|---|
| マーケティング | 毎週の定期、数字の急変 | テーマ案、記事・SNS の下書き、数字の比較と直し案 | テーマを選ぶ、OK、直して | 事実関係、顧客情報の混入、公開の判断 |
| 営業 | 問い合わせ受信、商談の前後、取引の停滞 | 相手の下調べ、返信・お礼・見積の下書き、議事録、CRM への登録案 | OK、直して、やめる | 価格・納期・範囲、議事録の正しさ、送信 |
| サービス提供・制作 | 作業開始、締め切り前、修正依頼の受信 | 納品物の下書き、締め切りの一覧、範囲内外の判定と返信案 | 直して、OK | 内容の正しさ、範囲外の扱い、納品の送信 |
| カスタマーサクセス・サポート | 毎週の定期、更新日の前、問い合わせ受信 | 利用減少の検知、更新案内・回答の下書き、よくある質問の追加案 | OK、あとで | 回答の正しさ、更新条件、契約の締結 |
| 経理・財務 | 請求日の前、入金期日の後、領収書の追加、毎月 | 請求書・催促文の下書き、経費の登録案、資金の見込み、税理士への相談文 | OK、専門家に回す | 金額、宛先、事業用かの判断、支払いの実行 |
| 総務・法務 | 契約書の受信、更新・届出の期限前 | 契約書の要点と注意点、期限の一覧、弁護士への相談文 | 専門家に回す、OK、やめる | 契約内容、締結、提出・納付の実行 |
| 人事・外注管理 | 外注の必要が出たとき、納品の受信、納期の超過 | 候補の一覧、依頼文、納品物の照合、支払いの登録案、社労士への相談文 | 選ぶ、OK | 依頼先の決定、品質、支払いの実行 |
| 経営企画 | 毎月・四半期の定期、業界ニュース | 月の振り返り、業界の動きの要約、次の一手の候補 | OK、直して、深掘り・試す・捨てる | 数字の読み方、何に取り組むかの決定 |
新規事業や将来のビジネスづくり(④)は、どの社長も大事だと分かっていながら、後回しになりやすい区分です。原因は次のとおりです。
通知型の運用では、情報を集めて選び、要点と打ち手を添えるところまでを AI に渡し、社長は「読んで選ぶ」だけにします。検討の結果は記録として残します。
何を調べるかのテーマは、社長が決めます。AI に任せると、自社の方向と関係の薄い情報まで集まり、通知が増えるだけになります。
テーマは、次の4つの観点から3〜5個程度を選ぶと整理しやすくなります。
| 観点 | テーマの例 |
|---|---|
| 今の顧客の業界 | 顧客の業界で起きている変化、規制の変更、大手企業の動き |
| 自社のサービスの分野 | 同じ分野の新しいサービス、価格の動き、新しい技術 |
| 自社の業務に影響する制度 | 税制、契約や取引に関する法令、補助金・助成金 |
| 社長が関心を持っている新しい分野 | 次に取り組みたい事業に関係する市場や技術 |
テーマごとに、Googleアラートなどに登録するキーワードを決めます。キーワードは、広すぎると関係のない情報が大量に届き、狭すぎると何も届きません。最初は少し広めに設定し、届いた情報を見ながら絞り込みます。キーワードの見直しも、AI が「このキーワードは関係のない情報が多い」と提案し、社長が OK を返す形にできます。
テーマとキーワードは、ルールの文書に「調査テーマ」として書いておきます。
トレンド調査の流れは次の6段階です。
エグゼクティブサマリは、1件ごとに次の3項目で構成します。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 何が起きた | 事実だけを短く。いつ、誰が、何を発表・変更したか。元の情報の出典 |
| 自社に関係あるか | 関係の度合い(大・中・小)と、その理由。どの顧客・どのサービス・どの部門に関係するか |
| 試せること | 自社でできる最初の一歩。小さく試せる形で書く |
通知文の例
【トレンド】今週の業界の動き(3件)
1. (発表した組織)が(内容)を発表((日付)、出典:(出典名))
関係:大 既存顧客の(業種)に直接関係します。顧客から質問が来る可能性があります
試せること:顧客向けに、この変更の要点をまとめた案内文を用意する
→ 深掘り/試す/捨てる
2. (分野)で(新しいサービス・技術)が登場(出典:(出典名))
関係:中 自社の(サービス名)の一部の作業に使える可能性があります
試せること:無料で使える範囲で、自社の作業1件に使ってみる
→ 深掘り/試す/捨てる
3. (補助金・制度の名称)の募集開始(出典:(出典名))
関係:小 対象要件のうち(要件)を満たしているか不明です
試せること:要件を税理士または支援機関に確認する
→ 深掘り/試す/捨てる/専門家に回す
| 選択 | AI がすること | 記録 |
|---|---|---|
| 深掘り | 関連する情報を追加で調べ、詳しいレポートを作る。自社への影響、競合の動き、必要な準備などを整理し、数日以内に通知する | 調査テーマの記録に「深掘り中」として残す |
| 試す | 最初の一歩を具体的な作業に分け、必要な準備(時間、費用、関係する SaaS の設定)を一覧にする。カレンダーに検討の時間を入れる案を出す。試した結果を確認する日を決めて登録する | 「試す」の一覧に、始めた日・確認する日とともに残す |
| 捨てる | それ以上調べない。同じ話題の情報は今後の通知から外すか、関係度を下げて扱う | 捨てた理由(一言)とともに残す。同じ提案を繰り返さない |
「深掘り」のレポートを読んだあとも、社長は改めて「試す」「捨てる」「あとで」を選びます。「試す」を選んだものは、確認の日に結果をまとめて通知し、続けるか、やめるか、事業として検討するかを社長が決めます。
この記録が溜まると、四半期ごとの「次の一手の案」(4-8)の材料になります。
情報が届いても、考える時間がなければ検討は進みません。検討の時間は、次の方法で確保します。
②作業と⑥管理を AI に渡して空いた時間を、この検討の時間に充てます。
ここまでの通知を、1日・1週・1か月・四半期の流れにまとめます。
| 時間帯 | AI がすること | 社長がすること |
|---|---|---|
| 社長が仕事を始める前 | 前日から届いたメールの仕分け、今日の予定と準備メモ、期限が近いもの、返事待ちの案件、未入金、下書き済みの返信をまとめ、朝のまとめとして届ける | — |
| 仕事の始め | — | 朝のまとめを読み、項目ごとに応答する |
| 応答のあと | OK が出たものを実行し、記録する。直してのものを直して再通知する | — |
朝のまとめの構成は 2-5 の例5を参照してください。項目の順番は「今日決めること」「今日送るもの」「今日の予定」「期限が近いもの」「返事待ち」とし、判断が必要なものを先に置きます。
日中は、急ぎのものだけがその場で届きます。
それ以外は翌朝のまとめに回ります。社長は、商談や制作、検討の時間に集中できます。
商談が終わると、次の流れが動きます。
商談が続く日は、商談ごとに通知を出さず、その日の終わりにまとめて届けるように設定することもできます。
| 曜日の例 | 通知 | 内容 |
|---|---|---|
| 週の初め | 今週の見通し | 今週の予定、締め切り、請求・支払いの予定、止まった商談 |
| 週の初め | 発信のテーマ案 | 記事・SNS のテーマ案(4-1) |
| 週の半ば | 業界の動き | トレンド調査のエグゼクティブサマリ(第5章) |
| 週の終わり | 今週のまとめ | 今週の受注・失注、送ったもの、未応答の通知の一覧、来週に持ち越すもの |
| 時期 | 通知 | 内容 |
|---|---|---|
| 月の初め | 月の振り返り | 売上、商談、問い合わせ、時間の使い方、次の月の案(4-8) |
| 月の初め | ルールの見直し | 先月追加したルール、矛盾や古くなったルールの候補 |
| 請求日の前 | 請求書 | 今月の請求書の下書き(4-5) |
| 月の半ば | 資金の見込み | 今後数か月の手元資金の見込み(4-5) |
| 月末 | 経費の締め | 未登録の領収書、判断が必要な経費 |
| 通知 | 内容 |
|---|---|
| 次の一手の案 | 3か月分の振り返りと、業界の動き、試した施策の結果から、次の四半期の候補(4-8) |
| 調査テーマの見直し | 調査テーマとキーワードごとの、届いた件数と選ばれた件数。見直しの案 |
| 通知の見直し | 通知の種類ごとの件数と応答の内訳。応答されないことが多い通知、毎回「やめる」になる通知の一覧と、止める・まとめる案 |
| SaaS と権限の見直し | 使っていない SaaS、AI に渡している権限の一覧(第7章)、契約の更新期限 |
通知を待たずに、社長から AI に案件の状況を尋ねることもできます。対話型の AI に「(会社名)様の案件はどうなっている?」と聞くと、CRM・メール・カレンダー・ファイル置き場から情報を集めて答えます。
答えの形式は、案件ごとに次の3行にそろえるよう、ルールの文書に書いておきます。
(会社名)様 (案件名)
今どこ:見積を送付済み((日付))。先方の社内確認中
止まっている理由:先方の担当者からの返信が(日数)ないため
次の一手:確認のメールを送る(下書きあり)→ OK で送信
複数の案件をまとめて聞いた場合も、同じ3行を案件の数だけ並べます。
今動いている案件の状況
1. (会社名)様 (案件名)
今どこ:制作中(納期(日付))
止まっている理由:なし
次の一手:下書きの確認((日付)に通知予定)
2. (会社名)様 (案件名)
今どこ:契約書の確認中
止まっている理由:弁護士の回答待ち((日付)に依頼)
次の一手:回答が届いたら要約して通知
3. (会社名)様 (案件名)
今どこ:入金待ち(期日(日付))
止まっている理由:なし
次の一手:期日の翌日に入金を確認
この形式にそろえておくと、社長は「止まっている理由」と「次の一手」だけを見れば、何をすればよいかが分かります。
次の4つの操作は、どの部門・どの区分でも、社長の OK があって初めて実行します。
| 操作 | 例 | 理由 |
|---|---|---|
| 送信 | メール、チャットのメッセージ、見積書・請求書・納品物の送付、専門家への依頼 | 送ったものは取り消せない。相手との関係や約束に直結する |
| 支払い | 外注費、経費、税金、サービスの利用料 | お金が出ていく。誤ると取り戻すのに手間がかかる |
| 公開 | サイトの記事、SNS の投稿、お知らせ | 不特定多数が見る。誤りが広がる |
| 契約 | 契約の締結、更新、解約の申し入れ | 法的な約束になる |
この4つについては、AI は下書きと準備までを行い、実行は社長の OK のあとにします。AI サービスの中には、送信などの操作の前に承認を求める設定を持つものがあります。たとえば Claude の Gmail 連携では、メールの送信・返信・転送は、標準の設定で実行前に承認が必要です。こうした設定は外さずに使います。
支払いと契約の締結は、AI に実行の権限を渡さず、社長自身が金融機関・会計ソフト・電子契約サービスの画面で行う形にしておくと、より確実です。
AI を SaaS につなぐときは、どこまでの操作を許すかを段階で決めます。
| 段階 | AI ができること | 向いている SaaS・業務 |
|---|---|---|
| 閲覧 | 読むだけ。検索・要約・一覧化 | 会計の数字、契約書、顧客情報の参照、ニュース |
| 下書き | 下書きの作成、下書き状態での登録 | メールの下書き、サイトの記事の下書き、請求書の下書き、CRM へのメモの追加 |
| 実行 | 送信・登録・変更を実際に行う | 社長の OK を受けたあとの送信、予定の登録、CRM の更新 |
最初はすべて「閲覧」から始め、慣れてきたら「下書き」、OK を受けたあとの操作だけ「実行」と広げていきます。
多くの SaaS では、AI をつなぐときに、どの操作を許可するかを選べます。HubSpot の MCP サーバーは、接続に使うアプリの権限の範囲(スコープ)で AI がアクセスできる範囲が決まります。Claude のコネクタは、接続したユーザーが元のサービスで持っている権限を引き継ぐため、そのユーザーが見られないファイルや記録は AI からも見られません。接続の画面で表示される許可の内容を確認し、必要以上の権限を渡さないようにします。
役割ごとの権限の表と、AI の操作を社長の承認へ戻す条件の決め方は、AIエージェントの権限設計で詳しく扱っています。
AI が何をしたかを、あとから確かめられるようにしておきます。
AI が誤った下書きを作ることや、誤った内容を登録することはあります。誤りに気づいたときの戻し方を、あらかじめ決めておきます。
| 誤りの種類 | 戻し方 |
|---|---|
| 下書きの誤り(送信前) | 「直して」で修正する。繰り返す誤りはルールに追加する |
| CRM や会計ソフトへの登録の誤り | SaaS の変更履歴から元の内容を確認し、修正する。どの通知・どの応答から登録されたかを記録で確認する |
| 送信してしまった誤り | 訂正の連絡を社長が送る。AI に訂正文を下書きさせ、OK を出して送る |
| 定期実行の誤り(毎回同じ誤りが出る) | その定期実行を一時停止し、指示の内容やルールを直してから再開する |
送信・支払い・公開・契約を社長の OK のあとに限っておけば、誤りの多くは送信前の段階で止められます。7-1 の線を守ることが、もっとも確実な誤り対策です。
AI は、資料をまとめたり、一般的な情報を調べたりすることはできますが、税務・法務・労務の判断の責任は持てません。次のようなものは、AI のまとめを参考にしたうえで専門家に回します。
| 専門家 | 回す内容の例 |
|---|---|
| 税理士 | 経費にできるかの判断、税金の計算と申告、決算、資金調達や大きな投資の税務上の扱い |
| 弁護士 | 契約書の条項の判断(損害賠償、権利、解約など)、取引先とのトラブル、未入金の法的な対応 |
| 社労士 | 人を雇うときの手続き、外注と雇用の区別、社会保険・労働保険の手続き |
どれを専門家に回すかの基準は、ルールの文書に書いておきます。AI が通知を作るときに、その基準に当たるものには「専門家に回すのがおすすめ」と添えるようにします。
顧客情報を AI に扱わせるときは、次の点を確認します。
この構成で手間とコストが減るのは、AI の作業が速いからだけではありません。ひとり社長の仕事の中にある、次の5つの損が減るためです。
指示型の運用では、AI に頼むたびに会社の情報、相手との経緯、自分の好みを説明し直します。専門家や外注先に頼むときも、毎回資料を探して経緯を説明します。
この構成では、会社の情報と判断の基準はルールの文書に、相手との経緯は CRM にあります。AI はそれを読んでから下書きを作るため、社長が説明し直す必要がありません。専門家や外注先への依頼文も、AI が経緯と資料をまとめた状態で届きます。一度直したことはルールに残るため、同じ説明を繰り返さずに済みます。
商談の内容をメモに書き、それを CRM に入れ直す。請求書を作り、その内容を会計ソフトに入れ直す。予定をメールで決めて、カレンダーに入れ直す。ひとり社長の仕事には、同じ情報を何度も入力する場面が多くあります。
この構成では、AI が1つの情報源から読み、必要な SaaS に入力します。商談の文字起こしから議事録を作り、CRM に登録し、宿題をカレンダーに入れる、という流れを AI が行うため、社長が入力し直す作業がなくなります。
依頼の伝え漏れで外注先がやり直す。契約の範囲を確かめずに修正に応じ、あとで費用の交渉になる。見積の前提が議事録と違っていて、出し直す。こうした手戻りは、作業そのものより多くの時間を取ることがあります。
この構成では、依頼文はルールの型に沿って作られ、修正依頼は契約の範囲と照らし合わされ、見積は議事録をもとに作られます。作業の前に必要な確認が入るため、やり直しが起きにくくなります。
過去のメール、前回の見積、契約書の条項、領収書。必要な情報を探す時間は、一回ごとは短くても、毎日何度も発生します。
この構成では、通知に判断の材料が添えて届くため、社長が探しに行く必要がありません。案件の状況を知りたいときも、AI に聞けば 6-7 の3行の形式で返ってきます。情報が SaaS ごとに正本として整理されているため、AI も探しやすくなります。
請求書の出し忘れ、入金の確認漏れ、契約の自動更新、届出の期限切れ、返信の忘れ、大事な相手への連絡の途絶え。抜け漏れは、気づいたときには損失になっています。
この構成では、期限と異常の通知が、社長が覚えていなくても届きます。応答がなければ期限の前に再通知されます。「確認する」という仕事そのものを AI に渡すため、忙しい時期でも確認が止まりません。
この構成は、一度にすべてを組む必要はありません。次の段階で、少しずつ広げます。
| 段階 | 内容 | この段階でできること |
|---|---|---|
| 0 | 頼めば答える AI を使う | ChatGPT、Claude、Gemini などのチャット画面で、文章の下書き、要約、調べものを頼める。指示型の運用 |
| 1 | 自分のルールを1か所に書く | 会社の情報、話し方、やってはいけないことを書いた文書を作り、AI に読ませる。毎回の説明が要らなくなる |
| 2 | メール・カレンダー・ファイル・CRM を AI につなぐ | AI が過去のメール、予定、資料、顧客の記録を読んで答えられる。「(会社名)様との経緯をまとめて」と頼むと、AI が自分で探してまとめる |
| 3 | 朝のまとめを毎日届けさせる | 定期実行の機能で、毎朝、メールの仕分け・今日の予定・期限・返事待ちのまとめが届く。通知型の運用が始まる |
| 4 | 部門ごとに通知を増やす | 第4章の流れを、効果の大きい部門から1つずつ加える。問い合わせ、商談後、請求と入金、契約の期限などが自動で通知される |
| 5 | 新規事業・トレンド調査の自動化 | 第5章の流れを組み、業界の動きがエグゼクティブサマリで届く。深掘り・試す・捨てるの記録が溜まる |
段階4で部門を加える順番は、抜けると損失が大きいもの(経理の入金確認、総務の期限)と、毎日発生するもの(営業の問い合わせと商談後)から始めると、効果を確かめやすくなります。1つの業務から始めて段階的に広げる進め方と、続けるかどうかの判断基準は、中小企業のAI活用支援でも整理しています。
各段階で、次の段階に進む目安は「その段階の仕組みに、毎日迷わず応答できているか」です。通知に応答しきれていない状態で通知を増やすと、第10章で説明する失敗につながります。
今日から始めるなら、次の3つを順に行います。
ステップ1:ルールの文書を作る
ファイル置き場に1つ文書を作り、次の3項目を書きます。
ステップ2:AI にメールとカレンダーをつなぐ
使っている AI サービスの連携の設定画面から、メールとカレンダーを接続します。Gmail と Googleカレンダーを使っているなら、Claude・ChatGPT・Gemini のいずれにも公式の連携機能があります。Outlook を使っている場合も、AI サービス側の連携機能が用意されているかを確認します。接続したら、「今週の予定と、それに関係するメールをまとめて」と頼み、正しく読めているかを確かめます。
ステップ3:朝のまとめを1つ登録する
AI サービスの定期実行の機能に、次のような指示を毎朝の時刻で登録します。
ルールの文書((文書名))に沿って、次の内容を朝のまとめとしてまとめてください。
1. 昨日から届いたメールのうち、返信や判断が必要なもの(返信が必要なものは下書きも)
2. 今日の予定と、予定ごとに準備しておくこと
3. 7日以内の期限があるもの
4. 3日以上返事がない、こちらから送ったメール
各項目は、結論・理由・おすすめの対応の順に短く書いてください。
メールの送信はしないでください。
1週間ほど使い、届いたまとめに「直して」を返しながら、指示とルールの文書を整えます。ここまでで、段階3に入ったことになります。
| 失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 通知が散らばって見なくなる | メール、チャット、AI のアプリなど、通知の届く場所が複数になり、どこを見ればよいか分からなくなる。結局どれも見なくなる | 通知の届く場所を1つに絞る(2-6)。新しい通知を加えるときも、同じ場所に届くよう設定する |
| AI の中だけに情報があり記録が残らない | AI との会話の中で決まったことや、AI が作った議事録が、AI の会話履歴にしか残らない。AI を替えたときや履歴が消えたときに失われる | 実行と記録の場所を SaaS に決める(3-3)。応答の結果は必ず CRM などに書き戻す流れにする |
| 最後の OK まで AI に渡す | 送信・支払い・公開・契約を AI が自動で実行し、誤りがそのまま外に出る | 7-1 の4つの操作は、社長の OK のあとに限る。AI サービスの承認の設定を外さない。支払いと締結は社長自身が画面で行う |
| SaaS を増やしすぎる | 同じ役割の SaaS が複数になり、情報が分かれる。AI がどこを読めばよいか分からず、まとめの精度が下がる。利用料も増える | 役割ごとに1つに絞る(3-5)。四半期ごとに使っていない SaaS を見直す(6-6) |
| ルールを書かず毎回同じ説明をする | AI に頼むたびに会社の情報や好みを説明する。説明を省くと、毎回同じ点を直すことになる | ルールの文書を作る(3-6)。直したことをルールに追加する流れを決める(3-7) |
| 通知が多すぎて応答が追いつかない | 通知が溜まり、未応答が増える。大事な通知が埋もれる | 急ぎ以外は朝のまとめに入れる(2-6)。同じ種類の通知はまとめる(2-7)。四半期ごとに、応答されない通知・毎回やめるになる通知を止める(6-6)。段階を一つずつ進める(9-1) |
自分の構成がどこまでできているかを確かめるための項目です。できているものに印を付けてください。
第9章の「最初にやる3ステップ」から始めてください。ルールの文書を作る、AI にメールとカレンダーをつなぐ、朝のまとめを1つ登録する、の3つです。この3つで、AI のほうから毎朝通知が届く状態になります。部門ごとの通知は、朝のまとめに慣れてから、1つずつ加えます。
この記事で説明した構成は、AI サービスや SaaS の設定画面で接続し、ルールや指示を文章で書くことで組めます。プログラムを書く必要はありません。接続のときに「どの権限を許可するか」を確認する画面が出るので、その内容を読んで判断することは必要です。分からない場合は、まず「閲覧」の権限だけで接続し、AI がどう動くかを確かめてから広げてください。
確認する点は3つです。1つ目は、使う AI サービスが、入力した内容や接続したサービスのデータを学習に使うかどうかです。サービスやプランで違うため、公式ページで確認し、学習に使われない設定やプランを選びます。2つ目は、AI に渡す権限を必要な範囲に絞ることです(7-2)。3つ目は、外部に出す文書に顧客情報が入っていないかを、送信の前に社長が確認することです(7-6)。送信・公開を社長の OK のあとに限っておけば、意図しない情報が外に出ることを防ぎやすくなります。
かかる費用は、AI サービスの利用料、SaaS の利用料、使う場合は自動化サービスの利用料です。料金はサービスとプランによって違い、改定されることもあるため、各サービスの公式の料金ページで確認してください。SaaS 側の AI 連携が、すでに使っているプランの範囲で追加料金なく使える場合もあります。たとえばマネーフォワード クラウド会計の MCP サーバーは、クラウド会計を利用していれば追加料金なしで使えると案内されています(プランによって対象外の場合があります)。
費用を考えるときは、利用料だけでなく、第8章で説明した説明のやり直し・二重入力・手戻り・探す時間・抜け漏れの損がどれだけ減るかと合わせて判断してください。
社員を雇う場合、社員に業務を教え、指示を出し、確認する仕事が社長に発生します。この構成では、ルールの文書に書いた内容をすべての AI が共有し、AI のほうから通知が届くため、指示を出す手間が小さくなります。一方で、AI は人と会うこと、関係をつくること、判断の責任を持つことはできません。⑤人との関係と①意思決定は社長に残ります。人を雇うかどうかを考えるときは、AI に渡せる②作業と⑥管理・確認を先に AI に渡したうえで、それでも足りない部分(人と会う仕事、現場での作業など)があるかで判断すると整理しやすくなります。
AI は間違えることがあります。そのため、この構成では、送信・支払い・公開・契約を社長の OK のあとに限っています。下書きの段階の間違いは「直して」で直し、繰り返す間違いはルールに追加します。登録の間違いは、SaaS の変更履歴と操作の記録から確認して直します(7-3、7-4)。議事録の「決まったこと」や、契約書の要点、見積の金額など、間違えると影響が大きいところは「人が必ず確認する箇所」として、第4章の各部門で挙げています。
人が増えても、3層の構成はそのまま使えます。変わるのは、通知の宛先と、OK を出す人です。たとえば営業の担当者を採用したら、問い合わせと商談後の通知はその担当者に届くようにし、OK を出す権限も担当者に渡します。社長には、金額の大きいものや方針に関わるものだけが届くようにします。ルールの文書と CRM の記録はそのまま引き継げるため、新しく入った人に経緯や基準を説明する手間も小さくなります。人が増える前から、記録を SaaS に残し、ルールを文書にしておくことが、そのまま引き継ぎの準備になります。