Google Driveで資料が散らかる原因は、フォルダが足りないことより、「とりあえず保存した、どのフォルダにも整理されていないファイル(loose files)が残り続けること」にあります。営業資料、議事録、見積、契約関連の下書きが My Drive に溜まり、後からどの顧客フォルダへ入れるべきか判断できなくなると、検索性も共有管理も崩れます。
2026年6月1日にGoogle Workspace Updatesで一般提供が案内された Organize My Files は、この散らばったファイルの整理を Gemini が補助する機能です。とはいえ、勝手に整理が確定するわけではありません。既存フォルダへ移す候補と、新しいフォルダを作る候補をユーザーが見てから承認する前提なので、便利機能として使うだけでなく、フォルダ設計や共有権限とセットで考える必要があります。
Organize My Filesは、Google Driveのウェブ版でMy Driveやフォルダを開き「Suggest file moves」を押すと、Geminiが散らばったファイルの移動先を「既存フォルダ」か「新しいフォルダ」で提案し、承認したものだけを一括で移動する機能です。勝手に移動はされず、承認前に移動先やフォルダ名を直せます。移動で見える人が変わる場合は確認が表示されるので、その内容を読んでから実行し、間違えたときは直後の「元に戻す」かCtrl+Zで戻します(新しく作られたフォルダは残ります)。
要点
- Organize My Filesは、Geminiが散らばったファイルの移動先を既存フォルダか新しいフォルダで提案し、承認したものだけを一括で移動する機能です。
- 承認前に中身と移動先、新しいフォルダ名を直し、移動で見られる人が変わる場合に出る確認を読んでから実行すると、共有範囲の思わぬ拡大を防げます。
- 間違えた移動は直後の「元に戻す」かCtrl+Zで取り消せますが、新しく作られたフォルダは残るため、不要なら手で削除します。
Organize My Filesとは何か
Googleの案内では、Organize My Files は Drive 内の散らばったファイルを対象に、Gemini が「どこへ動かすと整理しやすいか」を提案する機能です。ユーザーは My Drive や親フォルダから Suggest File Moves を開き、候補を見てからチェックボックスで採否を選べます。候補は、既存フォルダへ移す提案 と 関連ファイルをまとめる新規フォルダ提案 の2系統に分かれます。
重要なのは、これは自動ルール実行ではなく、あくまで承認前提の整理支援だという点です。候補一覧ではファイルやフォルダを開いて確認でき、移動先の変更や新規フォルダ名の修正もインラインで行えます。最後に一括移動を実行するとき、権限が変わる場合はその確認も表示されるため、「AIが勝手に片付ける」より「AIが整理候補を出し、人が最終決定する」機能だと理解した方が実務に合います。
| 論点 | Organize My Filesで起きること | 起きないこと |
|---|---|---|
| 候補提案 | Geminiが既存フォルダ・新規フォルダの候補を出す | 無条件で移動を確定しない |
| 対象範囲 | My Driveや親フォルダ内の散らばったファイルの整理を補助する | 組織全体の共有ドライブを一括再設計しない |
| 移動操作 | ユーザー承認後にバッチ移動できる | 承認なしでバックグラウンド移動しない |
| 権限 | 移動に伴う権限変化を確認できる | 権限ルールの設計自体を自動で直さない |
使える条件と対象ファイル
2026年10月26日時点のGoogle Workspace Updatesの案内とGoogle ドライブのヘルプをもとに整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象プラン | Google WorkspaceのBusiness Standard・Plus、Enterprise Standard・Plus、個人向けのGoogle AI Pro・Ultra、教育機関向けのGoogle AI Pro for Educationなど |
| 使える場所と言語 | パソコンのブラウザでdrive.google.comを開いた場合のみ。表示は英語のみ |
| 管理者と利用者の設定 | 管理者がDriveのGeminiを有効にしていれば既定で使える。利用者はWorkspaceのスマート機能を有効にしておく必要がある |
| 対象ファイル | PDF、Googleドキュメント・スプレッドシート・スライド、Microsoft Officeファイル、画像、文字起こしのある動画、ショートカット |
| 必要な権限 | 移動するファイルの編集者権限 |
| 利用上限 | 2026年7月15日まではプロモーションとして高い上限で、それ以降はユーザーごとの上限が適用。具体的な数値はGoogleのヘルプで確認する |
編集者権限のないファイルは整理の対象になりません。他の人から共有されたファイルが多いMy Driveでは、提案が出ないファイルが残ることを前提にします。
ファイル整理の具体例:提案の確認・権限・取り消し
営業担当のMy Driveの直下に、メールの添付から保存した見積書のPDF、商談の議事録のドキュメント、展示会の写真、個人の作業メモが混ざって置かれている場合を例に、操作の流れを見ます。
1. 提案を開き、既存フォルダへの移動から確認する
My Driveを開いて「Suggest file moves」を押すと、ファイルごとの移動先の提案が一覧で出ます。見積書や議事録が既存の顧客フォルダへ移る提案は、ファイルを新しいタブで開いて中身と顧客名が合っているかを確かめ、合っているものだけにチェックを入れます。顧客名が似ている別の会社のフォルダが提案されている場合は、移動先を正しいフォルダに直します。
2. 新しいフォルダの提案は名前と範囲を直す
展示会の写真やメモをまとめる新しいフォルダが提案された場合は、フォルダ名を自社の命名ルール(日付や案件名の付け方)に合わせて変えます。新しいフォルダの数が多すぎるときは、提案の画面で作るフォルダの数を減らすよう調整できます。個人の作業メモと顧客に関わる資料が同じ新しいフォルダにまとめられていたら、メモのチェックを外します。
3. 権限の確認を読んでから移動する
「Move files」を押すと確認の画面が出て、移動によってファイルを見られる人が変わる場合は、その確認も求められます。Google ドライブのヘルプでは、共有フォルダ内のファイルやサブフォルダはフォルダの共有設定を引き継ぐと案内されており、他の人と共有しているフォルダへ個人のファイルを移すと、そのフォルダを見られる人がファイルも見られるようになることがあります。社外の人と共有しているフォルダが移動先になっていないか、機密の資料が広く共有されたフォルダへ移らないかを、この画面で確かめてから「Create and move」を押します。
4. 間違えたらすぐに元に戻す
移動の直後に画面の下に出る確認メッセージの「元に戻す(Undo)」か、Ctrl+Z(MacはCommand+Z)で移動を取り消せます。ただし、取り消しても新しく作られたフォルダは削除されず空のまま残るため、不要なら自分で削除します。提案を外した(Remove)ファイルとフォルダの組み合わせは、30日間は同じ提案が出ません。
この流れを、月末にまとめてではなく、週に1回、短い時間で回すと、提案の数が少なく確認しやすい状態を保てます。移動後の共有の変化を後から追いたい場合は、管理者がDrive監査ログで確認できるようにしておきます。
どんな会社に向くか、どこで止めるべきか
Organize My Files が向くのは、フォルダの標準型はある程度決まっているのに、日常運用で散らばったファイルが増えている会社です。たとえば、担当者が Gmail 添付を一時保存し、そのまま未整理になりやすい営業組織、議事録や提案書の下書きが My Drive に残るコンサル・受託組織、月末にまとめて整理しているバックオフィスなどには相性があります。
逆に向かないのは、そもそも保存先の正本が決まっていない状態です。会社ID、案件ID、資料種別、共有ドライブと My Drive の境界が曖昧だと、Gemini の提案が当たっても外れても運用が安定しません。先に Drive顧客フォルダの標準型 や 共有ドライブ移行の前提 を揃えた方が成果が出やすくなります。
| 使い方 | 向くケース | 先に止めるべきケース |
|---|---|---|
| 既存フォルダへの移動提案 | 顧客別・案件別フォルダが既にある | フォルダ名の表記ゆれが激しい |
| 新規フォルダの提案 | 個人の作業束を小さく整理したい | 共有ドライブで厳密な命名規則が必要 |
| 一括移動の活用 | レビュー担当がいて権限変化を確認できる | 外部共有や機密資料が混在している |
| 日常運用への組み込み | 毎週の整理タイムを短縮したい | 監査ログやDLPの前提が未整備 |
特に顧客資料では、フォルダを増やすより「どのファイルをどの正本へ戻すか」の方が重要です。営業提案書、見積、議事録、契約条件メモを Gemini で整理するなら、最終保管先は共有ドライブ、顧客文脈の連携は CRM や Workspace CRM設計 に戻す、と役割分担を先に決めておく必要があります。
共有権限とガバナンスで先に見るべきこと
Organize My Files の一番の落とし穴は、「整理された」ことと「安全に管理できている」ことを混同しやすい点です。見た目が片付いても、共有範囲が広がる、顧客資料が別フォルダに混ざる、命名規則が崩れる、といった問題は残ります。とくに Gemini を通じて Drive 内の情報を扱う以上、顧客データをGeminiで扱う前提 と分けて考えられません。
- 外部共有が残ったまま新しい整理先に入っていないか
- 案件IDや会社IDを含むファイル名ルールを壊していないか
- 個人メモと顧客正式資料を同じ新規フォルダへ束ねていないか
- バッチ移動後の権限変化を説明できるか
- 利用者が Workspace smart features と Gemini 利用方針を理解しているか
管理者視点では、機能有効化そのものより「どこまで使ってよいか」のルール化が重要です。たとえば「個人の作業中ファイル整理には使ってよい」「顧客名・契約条件を含むフォルダは承認者レビュー後のみ」「共有ドライブ直下の新規フォルダ作成提案は管理者確認」といった粒度で決めると、Google Workspace AIガバナンス と現場運用をつなげやすくなります。
この機能は「整理の代行」ではなく「整理判断の時短」です。だから、精度を上げるコツは AI に全部任せることではなく、AI が判断しやすい保存構造を先に作ることにあります。Drive 側の整理だけでなく、Gmail 添付の保存、Chat でのレビュー依頼、顧客フォルダとの紐付けまで見たい場合は Workspace StudioでDrive整理を自動化する方法 も合わせて見るとつながります。
よくある質問
Organize My Files は勝手にファイルを移動しますか?
自動確定ではありません。Gemini が候補を出し、ユーザーがチェックして承認した後に一括移動します。承認前に対象と移動先を見直せます。
共有ドライブの厳密な命名規則がある会社でも使えますか?
使えますが、まずは既存フォルダへの移動提案を優先した方が安全です。新規フォルダ提案をそのまま採用すると、案件IDや資料種別ルールを崩しやすくなります。
顧客資料や契約書の整理にもそのまま使ってよいですか?
いきなり全面適用は勧めにくいです。顧客資料は共有権限、DLP、レビュー担当、CRMとの正本関係を先に決めた上で、対象フォルダを限定して試す方が安全です。
Organize My Files と Workspace Studio の違いは何ですか?
Organize My Files は Drive 内の散らばったファイルの整理候補を出す機能です。Workspace Studio は Gmail、Drive、Sheets、Chat などをまたぐフロー自動化の設計です。整理候補の確認と移動判断に留めるなら前者、保存・通知・承認までつなぐなら後者が向きます。
利用上限や言語条件はありますか?
ブラウザ版のDriveでのみ使え、表示は英語のみです。2026年7月15日まではプロモーションとして高い上限でしたが、それ以降はユーザーごとの上限が適用されています。具体的な上限はGoogleのヘルプで確認してください。
移動したファイルは元に戻せますか?
移動の直後に表示される確認メッセージの「元に戻す」か、Ctrl+Z(MacはCommand+Z)で取り消せます。取り消しても、新しく作られたフォルダは削除されずに残ります。



