Gemini in SheetsとMicrosoft Copilot in Excelは、どちらも開いている表計算ファイルの中でAIに編集を頼める機能です。機能の数を横に並べるより、ファイルの原本をどちらに置いているか、どの契約で使えるか、変更をどう確かめて戻せるかで比べるほうが、導入後の運用が安定します。
結論として、ファイルの原本をGoogleスプレッドシートで持つ組織はGemini in Sheets、Excelで持つ組織はCopilot in Excelを選ぶのが基本です。どちらも開いているファイルの中で数式・書式・ピボット・チャートを直せますが、契約の条件と変更前の確認方法が違います。Copilotは法人向けMicrosoft 365のCopilot Chat対象プランやMicrosoft 365 Premiumでも使え、編集前に計画を立てるモードがあります。Geminiは対象のGoogle WorkspaceまたはGoogle AIプランで使え、変更をプレビューしてから適用します。両方を使う組織では、業務ごとに原本の場所を決め、その場所のAIを使います。Workspace側のAI活用は Sheets AI関数の使い方と制限 も参照してください。
要点
- ファイルの原本をGoogleスプレッドシートで持つならGemini in Sheets、Excelで持つならCopilot in Excelを選ぶのが基本である。
- Copilotは法人向けMicrosoft 365のCopilot Chat対象プランでも使え、編集前に計画を立てるモードがある。Geminiは変更をプレビューしてから適用する。
- 両方を使う組織では、業務ごとに原本の場所を決めてその場所のAIを使い、データの扱いと管理を二重にしない。
7軸での比較
2026年10月26日時点のGoogleとMicrosoftの公式ヘルプ(Gemini in Sheets、Copilot in ExcelのFAQ)をもとに、組織で選ぶときに差が出る7つの軸で比べます。
| 判断軸 | Gemini in Sheets | Copilot in Excel |
|---|---|---|
| 1. 編集する場所 | Googleスプレッドシートのサイドパネル。Excel(.xlsx)のファイルはGoogleスプレッドシート形式で保存してから使うと最もよく動く | Excel(Windows・Mac・Web)で、編集・計画・チャットの3つのモードを使える。モバイル版は使えるモードが限られる |
| 2. 契約の条件 | 対象のGoogle WorkspaceまたはGoogle AIプラン | Microsoft 365 Premium、商用のMicrosoft Copilot、Copilot Chat対象の法人向けMicrosoft 365/Office 365など。企業ではテナントの設定にもよる |
| 3. 変更前の確認 | 提案内容をプレビューカードで示し、Applyを押すと実行 | 「計画」モードで編集前に計画を立てる。「編集」モードはブックを直接変更する |
| 4. 直せるもの | テーブル、数式、チャート、条件付き書式、ピボットテーブル、行や列の挿入・削除、フィルターなど | データの生成・変換、並べ替え・フィルター、数式、チャート、ピボットテーブル、書式など |
| 5. 元に戻す方法 | Undoで戻せるのは直前のGeminiの操作で、次の変更をするまで | 元に戻すか、以前の版を表示して戻す |
| 6. 使う前の制約 | 生成したチャートは元データの変更に連動しない。会話履歴はブラウザの再読み込みなどで消える | 計算方法が「自動」のときだけ編集できる。SharePointでチェックアウトが必須のファイルはWeb版で使う |
| 7. 管理者が決めること | コネクタの有効・無効など、組織の管理者設定 | Copilot Chatのアクセス設定がExcelにも適用され、Excelだけを個別に無効にはできない。Claudeを使う場合は管理者がAnthropicをサブプロセッサーとして有効にする |
操作の細部と、ChatGPTやClaudeも含めた既存ファイルの直し方の比べ方は、表計算AI比較 で扱っています。
エコシステムを基準にする理由
表計算AIは単体ではなく「メール・カレンダー・ドキュメント・分析基盤」と組み合わせたときに価値が出ます。Gemini in SheetsはGmail/Drive/Docs/Meet/Looker Studioと自然に結びつき、Copilot in ExcelはOutlook/OneDrive/Word/Teams/Power BI/Fabricと結びつきます。エコシステムをまたいで使うと、データ取り扱い・権限・監査が二重管理になり、運用負荷が高まります。
同じ作業でどう違うか:前年比の列を足す場合
「月別売上の表に前年比の列を足し、既存の書式に合わせる」という作業を、両方で行う場合の違いです。Gemini in Sheetsでは、サイドパネルに依頼すると変更内容を示すプレビューカードが表示され、Applyを押すと列が追加されます。結果が違えば、次の変更をする前ならUndoで戻せます。Copilot in Excelでは、「計画」モードで依頼して編集前に計画を立て、内容を確かめてから「編集」モードで反映できます。ブックの計算方法が「手動」になっていると編集できないため、先に「自動」に切り替えます。Copilotの変更は共同編集中の人を含め、ファイルにアクセスできる全員に見えます。Geminiも共有ファイルでは、追加した内容がドメイン外のユーザーに見える場合があります。どちらも複製で試してから原本に使います。
Gemini in SheetsとCopilot in Excelが向く場面
Gemini in Sheetsが向く場面
- Workspace中心の組織で、Gmail/Drive/Meet/SheetsをAIで横断したい
- 表の原本と、集計・分析の連携先がGoogle側にある
- 営業文脈をAIで補助したい(AI CRMと組み合わせて運用するケース)
- AppSheetなどノーコードと併用し、入力時の整形・分類をAIで補完したい
Copilot in Excelが向く場面
- Microsoft 365中心の組織で、Outlook/Teams/SharePoint/Power BI連携が前提
- 会計・財務・在庫・監査などExcel前提の業務で、長年の関数資産がある
- 表の原本と、集計・分析の連携先がMicrosoft側にある
- Microsoft Purviewでデータ分類・DLPを統合して扱いたい
混在環境での運用設計
WorkspaceとMicrosoft 365を同時に使う組織では、業務単位でメインAIを決めると運用が安定します。同じデータに両方のAIを触らせるとデータ取り扱いが二重管理になり、監査が難しくなります。
| 業務 | 第一AI | 理由 |
|---|---|---|
| 営業(Gmail起点) | Gemini in Sheets | Gmail/Calendar/Driveとの連携密度が高い |
| マーケ(メール配信込み) | 業務側のSaaS基準で決定 | HubSpot等のCRMと結びつくAI機能を優先 |
| 会計・監査 | Copilot in Excel | Excelの関数資産・DLP連携が活きる |
| 経営ダッシュボード | 分析基盤側に合わせる | ダッシュボードを作る分析基盤のある側のAIを使う |
| 議事録・要約 | 会議側に合わせる | MeetはGemini、TeamsはCopilot |
AI表計算で扱ってよいデータの境界
どちらを選んでも、扱ってよいデータの境界は管理者設定で決めます。基本ラインは次の通りです。
- 個人情報(氏名・電話・メール)は対象シートを限定し、AI処理範囲を明確化する
- 契約金額・条件は集計用シートに分離し、原本はAI入力させない
- 顧客の感想・自由記述は要約・分類のみAIに任せ、判断は人間がレビューする
- 機密度の高いシートは対象から外すか、管理者のデータ保護設定を確認する
Workspace側の管理者設定は Gemini for Workspace管理者設定、プライバシーは Workspace Geminiのプライバシーとトレーニング をあわせてご確認ください。
よくある質問
Gemini in SheetsとCopilot in Excelはどちらが「強い」のですか?
機能の総量で優劣を付ける比較ではありません。Workspace中心ならGemini、Microsoft 365中心ならCopilotが使いやすくなります。エコシステム選定が先行します。
SheetsをExcelに移行すれば、より多くのAI機能が使えますか?
機能数の議論ではなく、運用負荷と既存資産の議論です。Gmail/Drive中心の運用をExcelに寄せると、メール・カレンダー連携が分断され、運用が重くなる傾向があります。
Copilot in Excelを使うにはMicrosoft 365 Copilotのライセンスが必要ですか?
必須ではありません。Microsoftの公式FAQでは、Microsoft 365 Premium、商用のMicrosoft Copilot、Copilot Chat対象の法人向けMicrosoft 365/Office 365などで使えると案内されています。ただし、ClaudeやGPTのモデルを切り替えて使うには、商用のMicrosoft CopilotかMicrosoft 365 Premiumが必要です。
関数の互換性はどう違いますか?
SheetsとExcelは多くの関数が互換ですが、AI関連の独自関数・サイドバー機能は互換性がありません。AIに依存する処理は、移行時に再設計前提です。Googleスプレッドシートには、セルに入力して使うAI関数(=AI()、=Gemini())もあり、サイドパネルのGeminiとは使い方が異なります。
業務シートをAIに読ませるとき、何を最初に確認すべきですか?
シートの共有範囲・含まれる個人情報・DLPルールの3点です。共有範囲が広いシートで個人情報が含まれる場合、AI処理の前に範囲を絞ります。
混在環境で両方のAIを使う場合、コストは無駄になりませんか?
業務単位でメインAIを決めると、無駄が減ります。「全業務に両方」は推奨しません。営業はGemini、会計はCopilotのように分担する運用が現実的です。



